2月もあとわずかになりました。スペインでは、内陸にあるマドリッドでも日中はコートが重く感じる日もちらほらあり、毎年日本よりは早く春を感じるようです。でも、まだまだ本格的な春ではなく、冬に逆戻りしたような日もこれからやってくると天気予報で言っていました。
このコラムでも何回も書いているように、我が家は熱狂的なバルサファンで毎週末のリーグ戦などF.C.バルセロナの試合はほぼ全試合かかさずテレビ観戦しています。最近、バルセロナのホーム戦で前半でも後半でも17分14秒になると、観客席から「インデペンデンシア!(独立だ!)」と大合唱が起こります。
テレビのサッカー中継のアナウンサーや解説者も何も言わないので、どうして17分14秒に叫びはじめるのか、と我が家ではしばらくなぞだったのですが、ようやく分かりました。現在カタルーニャ州となっているところは、987年からカタルーニャ君主国という一国家だったのですが、1714年にスペイン王位継承戦の一つであるバルセロナ包囲戦で敗れ、スペインに統合されてしまいました。ということで、1714年はカタルーニャの人々にとっては屈辱の年として、忘れることのない大事な年となっているのです。日本での試合中継では解説者が説明していて、かえって日本のサッカーファンの方はすでにご存知だったかもしれませんね。
バルサファンは当然カタルーニャ州に住む人が多く、かつてのように一つの国としてスペインから独立したいという人々の割合もかなりのものらしいです。ですので、応援のときに振る旗の中には、カタルーニャ君主国のときの国旗(黄色とオレンジの横縞)がたくさんあります。また、国王杯などの決勝戦などでは、試合前にスペイン国歌が演奏されますが、そのときにブーイングするファンもいるのですよ。
F.C.バルセロナのホーム、カンプ・ノウでは座席に「Mes que un club」と書かれています。これはF.C.バルセロナは「一サッカークラブだけではなく、それ以上のものだ」という意味でカタルーニャ民族主義の旗振り役として機能しているということなのです。我々日本人は、日本国内で独立運動など全くないので、なかなかこのナショナリズムというものが理解できませんが、カタルーニャではかなりこの独立運動が盛り上がっています。
観客が座っているので分かりづらいですが、黄色い文字がそうです。
ちょっと視点は変わりますが、試合の分はこんなことでも使われています。それは、亡くなった選手への哀悼を示すことです。バルセロナにあるもう一つのリーガ・エスパニョーラのチーム、エスパニョールの選手だったダニエル・ハルケ選手2009年の夏、遠征先のイタリアで突然心筋梗塞のため亡くなりました。ハルケ選手がつけていた背番号21番に因み、試合の21分になると、エスパニョールファンの皆さんが1分間拍手し続けるというものです。
試合経過時間をこのように使うこともあるのだということ、誰が考えたかわかりませんが、興味深いですね。